元祖亘理のはらこめし

秋の味覚の代表 郷土料理「はらこめし」

「はらこめし」のイメージ写真

「はらこめし」は9月初旬から味わえます。

亘理町内の寿司店や食堂、旅館などで「はらこめし」を味わうことができます。

「どこのお店がおいしいんですか?」とよく聞かれますが、作る人によって味付けが違うことや、食べる人によって好みが違うため、「この店」と紹介することができないのです。

「はらこめし」は郷土料理ですので、姑から嫁へと長年その家庭の味が受け継がれているものです。ですから荒浜の人においしいところを尋ねると「おらいのが一番うまい」と返されます。

この秋、いろんな店を食べ歩きしてみましょう!

はらこめしの由来

鮭イメージ写真

阿武隈川の鮭は、古来有名で藩政時代は伊達藩主はもちろんのこと、将軍家にも秋の味覚として献上されました。

これを漁獲するため、阿武隈川の河口に地引網を仕掛け、数十人の漁夫たちが、掛け声も勇ましく、一網に数百の銀鮭を漁獲したといわれています。

「腹子飯(はらこめし)」は、仙台藩主貞山公(政宗)が、貞山堀の工事臨検の際、荒浜漁民が鮭の腹子をご飯に炊いて献上したところ、貞山公はことのほか喜び、側近へ吹聴したのが、世に珍重せられるに至った始めと伝えられています。

藩政時代から続く伝統の味は、荒浜の飲食店が加盟する「荒浜はらこめし会」などの必死のPRもあって、全国的に有名になり、週末になると「はらこめし」を目当てに多くの観光客が来町し、人気の店先には行列ができるまでになりました。

はらこめしができるまで

元祖の味を伝承する人たち

「荒浜はらこめし会」女性たち

「荒浜はらこめし会」の加盟店などでは、その店や家庭に受け継がれた元祖の味を守りながら、美しい盛り付けと味わい豊かな「はらこめし」を提供しています。

しかし、最近ではコンビニや駅弁などで、ご飯にイクラをのせて「はらこめし」として販売しているのを目にします。一つのお弁当としてはおいしいのですが、亘理に伝わる「はらこめし」とは違います。

このようなこともあり、郷土料理「元祖はらこめし」をきちんと伝承しなくてはならないと、荒浜婦人会のみなさんが活動をはじめています。

昔ながらの伝統食だからこそ、きちんと伝承していきたい」と話すのは、荒浜婦人会の濱野かじ子会長。昔ながらの炊き方を知っている中嶋末代さんを中心に、子どもの頃食べた昔ながらの味の作り方を会員のみなさんと一緒に覚えて、若いお母さんも「これが伝統のはらこめし」と自信を持って作れるよう、そして子どもや孫の代まで受け継いでもらえるよう、炊き方などの講習会を開きたいと考えています。

濱野会長のお父さんが漁師だったこともあり、子どもの頃祖母がよく「はらこめし」を作ってくれたそうです。今と違って身も腹子も全部混ぜてあり、あの味が今でも忘れられないといいます。だからこそ、元祖の味を守りたいという気持ちが強いのです。

中嶋さんと荒浜婦人会の橋本さん、阿部さんの協力をもらい、濱野会長のいう昔ながらの「はらこめし」を再現しました。

鮭をさばく

調理は、活のいい新鮮な鮭をさばくことからはじまります。慣れた手つきで腹に包丁を入れ、はらわたを取り、丁寧に腹子(鮭の卵)を取り出していきます。鮭の頭やひれなどは、後であら汁などに使うためきちんと分けておきます。三枚に下ろした鮭の身を約7センチの厚さに切り分け、醤油、砂糖、酒などで煮込みます。

室内が甘い香りに包まれてきたころ、隣のテーブルでは腹子をほぐす作業が始まっていました。腹子は膜の中に大切に包まれていて、力を入れすぎると潰れてしまいそうな、繊細で鮮やかな色をしています。この腹子を婦人会の濱野さんと阿部さん、橋本さんが慣れた手つきで次々とほぐしていきます。

切り身が煮上がり

調理をしている4人に「だれから作り方を教えてもらったの?」と聞くと、口をそろえて「見よう煮た鮭の身の中に腹子を入れます見まねで作るようになったんです」と話します。また、以前は一度にたくさんの「はらこめし」を作って、親戚や近所にお裾分けする、そんな慣わしのようなものがあって、みんなで集まったときに「うちではこういう作り方をする」というような話で盛り上がったそうです。

そんな話をしている間に切り身が煮上がり、鍋の蓋をあけると一面に白い湯気と煮魚の香りが立ち込めます。そして、丁寧にほぐした腹子を鍋の中に泳がせ、炊き立てのご飯に汁ごと混ぜ合わせできあがります。

郷土料理「はらこめし」

できたてのはらこめしは、シンプルな見た目とは違い、鮭の甘味が口の中に広がっていく、そんなおいしさを体験しました。また、先ほど分けておいた頭のちょうど額の部分は、コリコリした食感が楽しめる「氷頭なます」に、その他は「あら汁」に姿を変えてテーブルに並びます。

今の「はらこめし」は、器の中に腹子や切り身をきれいに並べます。いつのまにか、どの家庭でもこうするようになりました。

荒浜婦人会が今守ろうとしている「元祖はらこめし」は、決して今の「はらこめし」を否定するものではなく、昔はこして食べたということ、これが基本、「元祖」であるということをこれからも受け継いでほしい、守り続けてほしいという願いがあるのです。

今の季節にしか味わえない郷土料理「はらこめし」、私たちもこの伝統的な食文化を、しっかり次代に伝えなければなりません。

昔ながらのはらこめし

昔ながらのはらこめし。現在作られているはらこめしとは違い、シンプルな盛り付けです。荒浜にゆかりのある年配の方には、なつかしいものです。

中嶋さんが漬けたきゅうり

この時期欠かせないのが、自家製の漬物。このきゅうりは中嶋さんが漬けたものです。「はらこめし」によく合うんです!

この「元祖の味を伝承する人たち」は、広報わたり2006年11月に掲載したものを元にしています。

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